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「私の師はお客様」

私は表具のプロフェッショナルではありません。常に教えを請う立場なのです。

表装の経験は皆無からの出発です。元々が書道用品の販売員でした。時々お客様から頼まれ、近くの「表具屋さん」に仕事を依頼していました。しかし私が思っている表具の出来・イメージではありませんでした。そして表装部門を設立することになり、お客様のご要望に答えるべく初めての分野「表装」に足を踏み入れさせていただきました。

お客様にご提案してはご意見に耳を傾け、お客様のご依頼通りに作っては自分の感じた意見をお話しさせていただいたりの連続です。今もそうです。

常に気を使う点があるとしたなら、書作品で申せばお客様は「なぜこの詩歌を選ばれ揮毫されたのか、そしてその墨色・書体・書風はどこから…」そんな風に考えながら色相・形式・デザイン等のご希望を伺い、ご提案してまいります。

当工房は熱圧着プレス機を使った近代表装です。ただし作品の裏打ち(肌裏等)には出来るだけプレス機を使わずに糊・刷毛を使って手で作業します。また掛軸の軸先は自家製の焼物を使っています。作品とのイメージを大切にしたいものですから。

よく「おまかせ」の言葉をお聞きすることが多いのですが、掛けられる場所・壁面の色、また展覧会に出品される作品なのかにより表現する様式は変わっていくものです。その点をよく伺って仕事に取り組んでまいります。

掛軸・額装からいつの間にか和綴本・折帖・巻子・屏風へと未経験の仕事にお客様からたくさんのエールをいただき挑戦してまいりました。はたして私の仕事の出来栄えに満足されておられるのでしょうか。応援して下さった書家・日本画家の先生方の作品を載せさせていただきました。お仕立て作品の9割以上は書の作品ですので「墨の定着性」には気を使って接しているつもりです。

掛軸工房OBUSE 代表 桐原学